2015年、振付師のウェイン・マクレガーがすでに引退していた アレッサンドラ・フェリ に、自身が振り付けた バレエ 作品『ウルフ・ワークス』でカムバックしてほしいと相談すると、フェリは迷うことなく「イエス」と返事をした。それは親しみやすい人柄で、礼儀正しい英国人であるマクレガーが、お茶を飲みながら、丁寧にお願いしたからだけではなかった。 それから9年後の今、“プリマ・バレリーナ・アッソルータ”の称号を与えられた世界でも数少ないダンサーであるフェリは、マクレガーが彼女のために創作した役をもう一度踊ることを承諾した。61歳となったフェリは『ウルフ・ワークス』2公演に出演する。作家ヴァージニア・ウルフの人生と作品にインスパイアされたこのバレエ作品は、数々の賞を受賞しているが、今回、アメリカン・バレエ・シアター(以下ABT)で ニューヨーク 初演を迎える。 最近はめったに舞台に立つことのないフェリだが、マクレガーと再びタッグを組むこと、そして30年間住み慣れた街の舞台で踊ることに、さほど説得は必要なかった。むしろ、フェリは今回の出演に心を奪われていた。�.