featured-image

今年の カンヌ国際映画祭 で国際映画批評家連盟賞を受賞した『 ナミビアの砂漠 』は、山中瑶子の商業長編デビュー作だ。女性としては最年少での受賞でもある。19歳のときに手がけ、国内外で高く評価された『あみこ』から7年。多作でも、撮りたいものが湧き出してくるタイプでもなく、「毎回苦悩して捻り出してる」。コロナ禍も重なったため、 京都 に 移住 し、「( 撮りたいものを)見つけるためにも、ちゃんと生活してみる」ことに挑戦したら、意外と大変だったと笑う。 坂本龍一 は『あみこ』を観て、「自由さの中から生まれたパワーに惹きつけられる」と語っていたが、自由であることを山中は常に意識しているのだろうか。「子どものときからすごく不自由だという感覚がありました。子どもだからと知りたいことを教えてもらえないフラストレーションとか。ずっと『自由になりたい』がベースにあった。でも、大人になっても、社会の枠組みや性差にとらわれていて変わらないなと気づいて、まだ自由になりたいと思っています」 とはいえ、映画作りにおいては、ある程度の足枷があったほうがいいと、あえて自分で枠組みを決めることも。「脚本も枠組みのようなものですよね。でも書いたときと演出のときで気分は違っていたりもするので、変えられる範囲で枠組みを超えたりはします」 映画監督とはすべてをコントロールする存在だと思っていたが、自分がやってみたらそうはならないし、そういうことに興味もないと気づいたという。淡々飄々としていて、いい意味で映画を撮らずにはいられない、という気概も気負いも感じられない。それでも映画を撮るのはなぜなのか。「映画はフレームの中の雲も人も動く。そこにある偶然性というか、コントロールのできなさの中に豊かさを感じます」『ナミビアの砂漠』は作り手も演者も若い。「20歳前後って、情報があふれる社会に放り出され、そこから何かを選び取らないといけない時期。今の世代は私も含め、諦めがベースにあるから冒険をしない。何が欲しいか、何がしたいかもわかりづらい。でも自分の気持ちを見つめてみることとか、間違ってもいいという感覚をこの映画では伝えたかった」。映画の中にも登場するカウンセリングを、山中自身も受けてみたそうだ。「自分の気持ちを手に取る練習になってすごくいい。心理学部がある大学なら安いのでお勧めです」 Text & Editor: Yaka Matsumoto.

Back to Entertainment Page